年末にフラメンコ舞踊の小島章司さんから
近況報告を兼ねた今年のヘレスのフェスティバルでの公演の案内のお便りを頂いたので、
コチラも近況報告がてらの年賀状をお出ししたら、
年明けに、以前にお作りした仮面のメンテナンスをお願いされた。
ヘレスのフェスティバルでの演目はガルシア・ロルカをテーマとした新作という事だし、
演出・振付がハビエル・ラトーレとあるので、
どの仮面が送られて来るのだろうと思っていたら、
私が27才の時に創作した「カディスの女」、ペテネーラの仮面だった。
「カディスの女」は美大で舞台美術を専攻したものの、
当時、女性では継続出来る受皿がなく、
舞台用の仮面や衣装や化粧品会社のスタイリストやメーキャップなどをしていた頃、
スペインから帰国したばかりだった小島章司さんの意欲作に参加した、
いわば、仮面創作の原点となった仮面である。
「オ〜、なつかしいなぁ〜!!」
「カディスの女」はカディスの伝説の美女ペテネーラを題材にして、
仮面をつけた男性舞踊手である小島章司さんが能の形式にのっとって、
生前のペテネーラを前ジテ、死後の黄泉の国のペテネーラを後ジテとして、
45分ほどを仮面をつけたままでフラメンコの女振りで踊り抜くという
芸術祭参加の意欲作で、高い評価も受け、
2度の再演を重ね、NHKの「芸術劇場」でも放映され、
私が仮面の持つ世界の可能性というものを実感した公演でした。
久々に再会しましたねぇ〜
27才の私!なかなかやりますねぇ〜
今もほとんど進化していませんねぇ〜(笑)
まぁ、退化もしていないと思いますが。
この時は、当時の超売れっ子カメラマンの撮影スケジュールに合わせる為に、
ホントにタイトな製作リミットで最後はもう夢遊病状態で仕上げた感じでしたねぇ〜!
昨年のラグビーワールドカップのセレモニーも限界を超えたスケジュールと仕事量だったし、
今年オファーを受けているのも公演は8月というので久々に安心していたら、
制作発表が3月末で、その時には何らかの形が欲しいそうで、
私を取り巻く環境は27才当時と、コチラのタイトさも何ら変わりなく進化もない!
「カディスの女」の仮面は顎のあたりをぶつけたかして、
表面の胡粉が一部剥落して、そこから胡粉仕上げにヒビが見受けられる。
もう、小島章司氏がつけて踊る事もなく、
いわば記念碑のようなものだから、
あまり綺麗に修繕するよりは、
この時代の空気をまとったまま
時間がこの仮面に与えたものを残すかたちで、
これ以上の破損が進行しないように、
さりげなくメンテナンスをするのが良いだろう。